e法廷(e-Court) ~書面による準備手続による試行~ #2

 期日の様子を描く前に,書面の提出など事前の手続の変化について触れておきたい。結論から言うと,今回の試行においては,書面の提出については,従前の手続と何ら変わらない。ただ,利用している手続が書面による準備手続なので,そのことによる影響がある。

 準備書面については,今まで通りである。 *1 Wordで作った準備書面を印刷して,職印を押して,FAXで裁判所と相手方に直送する。ただ,書面による準備手続における協議では準備書面の陳述ができないので,書面による準備手続が終了した後の口頭弁論において,まとめて陳述する扱いとなる。期日がe-Courtなので,書面の提出も電子メールか何かで送ればと思うが,今回の試行は,e-Courtのみ試してみるということらしい。*2

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 証拠については,書面による準備手続では,証拠調べができないので,正式な提出ができない。原本確認したい証拠について,カメラ越しに確認することも難しいだろうから,そういう意味でもこれは致し方ない。ただ,準備書面の中で証拠に触れないわけにもいかないので,提出予定の証拠を仮に提出することになる。提出の方法はいままでと同じ。FAXで直送する。ただ,裁判所に出頭しないので,クリーンコピーを渡せない。FAXで送ると見づらい証拠は,予め郵送する必要がある。なお,仮に提出した証拠は,書面による準備手続が終了した後の口頭弁論期日や弁論準備期日において,正式に提出することになる。

 準備書面も証拠も,陳述や提出は,書面による準備手続終了後にまとめて行われるので,ちょっとまどろっこしいところもあるが,現実には,仮にもいったん提出した準備書面や証拠を引っ込めるということもできないし,引っ込めたとしても弁論の全趣旨としては斟酌されるので,いままでの手続とそう変わるところはないだろう,というのが実感である。

 今回の相手方(被告)の先生は,きっちりと対応してくれる方なので,e-Courtによる期日の前に,被告の1回目のまとまった反論と,原告の一応の再反論を準備書面としてやり取りすることができた。

(つづく)

*1:ただし,正式な書面提出ではないので,必ずしも直送など法律で認められている方法だけに頼る必要はありません。電子メールに添付して送ったり,ネットワーク上のストレージにアップロードしたり,と言った方法も考えられます。

*2:裁判手続等のIT化検討会の取りまとめによると,裁判手続(民事訴訟)のIT化は,3つのフェーズで行うということになっています。最初のフェーズが,いま描いている現行法下でも実現可能なe-Courtの試行です。