e法廷(e-Court) ~口頭弁論等への本格導入~ #1

 今日は,平成34年4月某日。*1 民訴法及び関連法令・規則の改正が完了し,めでたく施行期日を迎え,口頭弁論,弁論準備,証人尋問,和解,審尋等すべての期日をe-Courtで行うことが可能となった。民訴法上「期日」が予定されている手続について,一括して規定が置かれ,裁判所が相当と認めるときには,当事者の意見を聴いて,期日をe-Courtによって行うことができるということになったのである。*2

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 法律等の改正を踏まえて,ウェブ会議を行うためのパソコンの導入及びネットワーク契約が各地の裁判所で進められた。ただ,4年前から書面による準備手続における試行が開始されていて,それに合わせて,裁判所は徐々に設備の導入を進めていたので,口頭弁論等における導入に合わせて一気に導入がなされたわけではない。予算に大きなインパクトを与えないように上手く導入が進められた。

 ただ,ウェブ会議のシステムについては,セキュリティや継続性の問題から,裁判所が独自のシステムを開発した。ただし,いちから開発したわけではなく,使いやすいことで有名な某ウェブ会議システムをカスタマイズしたようである。この裁判所メイドのウェブ会議システムは,完成途中の段階から,一部の書面による準備手続において試験的に使用され,利用者の意見が反映されているので,とても使い勝手の良いものに仕上がっている。*3

 なお,証拠の原本確認や,証人尋問,和解の勧試など,face to faceでやった方がよい手続もあり,かつ,全ての当事者や弁護士がe-Courtに対応できる設備を持っているわけでもないので,全ての期日がe-Courtで行われるわけではない。e-Courtで期日を開くか否かは,最終的には裁判所が判断するが,その際,当事者の意見を聴くこととなっており,例えば「出頭したい」「e-Courtを利用する環境がない」という当事者がいるのに,無理にe-Courtで期日を開催することはない。一方当事者のみがe-Courtに同意しない場合は,その当事者は裁判所に出頭し,他方当事者のみe-Courtで参加するということも可能である。

 当面は,被告が欠席することが多い第1回口頭弁論期日,弁論準備期日などを中心にe-Courtが利用されることになる。必要に応じて,証人尋問期日,和解期日でも利用が広がっていくだろう。また,利用方法の周知などの面から,当初は代理人が付いている事件でのみ運用され,1年後を目途として本人訴訟でも運用を開始するという方法が取られることとなった。

(つづく)

*1:妄想です。

*2:e-Filingについては,いま現在でも民訴法132条の10に提出に関する一括規定がありますね。

*3:アジャイル開発又はプロトタイピングというやつですね。