e法廷(e-Court) ~口頭弁論等への本格導入~ #4

 弁論準備手続が終了し,尋問期日が開かれることとなった。尋問期日もe-Courtで行うことができることとなっているが,今回の尋問期日は敢えてe-Courtで行わなければならないような事情もないので,今まで通り,公開法廷で行われる。

 法廷に行ってみると,私の期日の前に,別の当事者の口頭弁論期日が入っていたので,図らずも傍聴することとなった。しかし,この口頭弁論期日はe-Courtで行われているので,両当事者(代理人)とも法廷にはいない。当事者席には大きめのモニタが置かれ,それが傍聴席の方を向いている。そして,各当事者(代理人)の顔がそのモニタに映っている。法廷にはスピーカも設置されていて,当事者(代理人)がしゃべると,その音声が流れる。こうして傍聴するのである。慣れないと変な感じであるが,傍聴に特に支障があるわけではない。*1

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 なお,口頭弁論等をe-Courtで行うか否かは,当事者の意見を聴いて,裁判所が判断することになっている。したがって,裁判所とより直接的にやり取りしたいという場合は,法廷に出頭する旨の意見を述べることになる。法廷に敢えて来たいという当事者の意向を,裁判所が無視するということは基本的にはない。

 改正法では,当事者がe-Courtにより法廷外から期日に参加することが許容されたが,裁判官がe-Courtにより法廷外から期日に参加することは許容されていない。 *2 したがって,裁判官の訴訟指揮の様子は,常に傍聴席から直接,見ることができる。行政訴訟や公害訴訟等,裁判所の訴訟指揮を法廷で直接的に傍聴する要請があるような類型の訴訟でも,e-Courtがその機能を阻害するということは,基本的にはない法制度となっている。

 そうこうしているうちに,前の期日が終わり,自分の番が回ってきた。まずはe-Courtであるがゆえに原本確認できなかった証拠の原本確認を行い,正式に提出扱いとした。その余は,今までとまったく同じである。こうしてみると,e-Courtって何のためにあるのか?という気もする。しかし,おそらくe-Courtで期日を行うことで,期日の実質的な面がより強調され,効率的で無駄のない争点整理が可能となるという点にメリットがあるのだろう。しかし,そうするかどうかは,結局は,裁判官と当事者(代理人)のやる気次第。e-Courtもそれを助けるきっかけや道具に過ぎないことは言うまでもない。

(一応,完)

*1:傍聴の実現方法として,e-Courtで裁判所及び両当事者間で流れている映像と音声を,そのままインターネットで公開すれば良いのでは?という考え方もあります。勿論そうした方が傍聴の実が上がって有益な訴訟類型もあると思います。しかし,多くの訴訟,特に個人が当事者の訴訟においては,日本人の感覚としては,訴訟の内容が全世界に公表されることを望まないのではないか,という気がします。

*2:裁判所が法廷外から期日に参加できる法制度にした場合,非常駐支部でも毎日期日を開催できるというメリットがあり,支部での期日を機動的に開くことができるようになる反面,支部の非常駐化を促進してしまうのではないかという危惧もあり,難しいところだと思います。