e事件管理(e-Case Management) ~一部導入~ #4

 e-Case Managementシステム,e-Courtシステムの利用が開始されると,これを使わないと裁判を受けられないのか?という問題が生ずる。

 しかし,少なくともe-Case Management及びe-Courtに関しては,これを使わないと裁判を受けられない,ということはない。e-Courtで期日を開くか否かは,当事者の意見を聴いて,裁判所が判断する。その際,機器がないことなどを理由に当事者がe-Courtでの期日に反対した場合,それにも関わらず,裁判所がe-Courtでの実施を強行する事態は考えられない。

 e-Courtを一切利用しない事件となると,e-Case Managementシステムにアクセスしなくても,訴訟に参加することは可能である。したがって,e-Case Management,e-Court両方とも全く使用しないでも,裁判を受けることは可能である。したがって,これらのIT化のシーズが,憲法上保障される裁判を受ける権利を侵害するわけではない。

 e-Courtの利用が非弁活動を助長させないか,という問題もある。*1 実際に法廷で期日を開く場合,弁護士以外の人が活動することは事実上難しいが,e-Courtの場合,カメラを通して期日に参加するので,画角に入りきらない場所に弁護士以外の人が隠れていて,指示を出したりすることが考えられるからである。

 おそらく現実的には,指示を受けてしゃべる場合には,視線の動きや話す内容の不自然さなどから,指示する者の存在がある程度は分かるのではないかと思われる。問題は,指示を受けていると思われる場合に,遠隔地にいる出席者に対して,どのようにして訴訟指揮権を及ぼすか,という問題であろう。おそらく,その場で第三者を排除することは難しいと考えられるので,非弁活動の兆候が感じられる場合は,裁判所の裁量で,期日を打ち切り,次回からe-Courtではなく法廷での期日に切り替えることが考えられる。

(一応,完)

*1:弁護士法72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定めています。