e提出(e-Filing) ~本格導入~ #1
平成36年4月某日 *1 ,いよいよe-Filingシステムがリリースされ,裁判所に対して,訴状の段階からデジタル情報で書面と証拠を提出できることとなった。裁判所においても,デジタル情報で提出された書面と証拠については,紙にするのではなく,デジタル情報をそのまま原本として取り扱い,保管することが可能となった。
既に,電子メールによる直送は実現しているので,裁判所・当事者間で大多数の書面及び証拠がデジタル情報でやり取りされていたが,
- 申立て段階の訴状等もデジタル情報になったこと
- 裁判所において紙ではなくデジタル情報で保管することとなったこと
- デジタル情報のやり取りが,電子メール添付ではなく,裁判所が提供する事件管理ポータルサイトにファイルをアップロードする方法に変わったこと
- 裁判所が作成する判決書などの文書もデジタル情報に変わったこと
この4点が大きな変化である。
これにより,当事者は,自分が当事者となっている/なっていた事件(弁護士は自分が代理人となっている/なっていた全ての事件)で扱われている全ての事件記録を,裁判所の事件管理ポータルサイトで確認することが可能となった。*2 これにより相手方の書面の記載をコピペして,自分の書面を作成することが容易になり,認否などが簡単にできるようになった。
具体的には,既に運用されていた事件管理ポータル画面に,新規事件登録のボタンが追加され,ここから新規事件の情報を登録し,訴状等の申立書をアップロードできることとなった。既存事件の書類提出も,書類提出ボタンのクリックや事件一覧から該当事件を選択することで可能となった。相手方から提出される書面や証拠も,送達書類確認ボタンをクリックすることで可能となっている。なお,提出がなされたことは,システムに登録しているメールアドレスへのメール送信や,携帯電話に対するメッセージ送信で確認することが可能である。
裁判官や書記官も,自分が担当している/担当した全ての事件の事件記録を検索したり閲覧したりすることができるようになった。また,他の裁判官が担当した事件についても,判決など一定の範囲については,全て検索・閲覧の対象となっているほか,一定の手続を経て,事件記録もすべて閲覧できる。
また,上級審への移審に際しても,紙の事件記録を引き継ぐのではなく,上級審でデータを引き継ぐ(現実には参照する)だけとなった。例えば,地裁による文書提出命令却下決定に対する即時抗告を高裁が審理する場合でも,紙の事件記録を高裁に移す必要はなく,高裁から事件記録を参照するだけで良いこととなった。
(つづく)