e提出(e-Filing) ~メールによる直送~ #1

f:id:ahiraoka:20180822082130p:plain

 今日は,平成32年8月某日 *1 である。書面による準備手続におけるe-Courtの試行が始まって約1年半ほどが経過した。口頭弁論でもe-Courtを実現するための法制審と,e-Filingとe-Case Managementを実現するための法制審が始まっているようである。*2

 書面による準備手続に参加できたのは,結局,あのとき1回きりであった。あのとき不便に感じたことの一つは,期日がe-Courtになって便利になったのに,書面の提出は相変わらずFAXで「なんだかな~」ということであった。電子データでやり取りできたら,認否などのときに相手方の主張を引用できて便利だろうに。また,自分の主張・証拠,相手方の主張・証拠すべてが電子データになっていたら,当面じっくり読みたい書面だけ印刷して読み込み,保存は電子データの形で行えばいいわけで,書庫スペースの節約になるし,ちらっと参照するだけなら裁判所まで重い記録を運ばなくても,ノートパソコンやタブレットを持っていけば足りるので,助かる。全部紙で運びたい人は印刷をすれば良いのである。それは各人の自由。FAX送信による劣化もないので,クリーンコピーを提出する手間もなくなる。

 しかし,e-Filingが法制審議会を経て本格的に実現するのは,相当先になる。そこで,とりあえず書面の提出を電子データで行うための過渡的な措置として,いまはFAXでの送信が認められている書面の直送に,電子メールによる送信も追加的に認めるということになったらしい。*3 直送をファクシミリで行うというのは,民事訴訟規則に規定があるので,その辺りを改正したということだ。

 ただ,残念ながら,裁判所が保管する記録原本を電子データとするという部分は,民訴法の改正が必要となるので,現時点で実現することはできないらしい。裁判所が保管する記録が電子データになれば,裁判所も保管コストが削減できるし,保全→本訴→上級審→執行とずーっと同じデータを共有できて,当事者が紙で連絡役をしてあげるなんてことも必要なくなるから,便利だろうなあ。でも,まあ法律の改正も必要だし,システムの構築もあるから仕方がない。なんでも最初の一歩からと言うことで,民事訴訟における各種書面のやりとりが,とりあえず電子データでできることになったことの意義は非常に大きい。

(つづく)

*1:やはり妄想である。

*2:内閣官房の裁判手続のIT化検討会の取りまとめでは,フェーズ2で口頭弁論でのe-Court,フェーズ3でe-Filingとe-Case Managementを実現するとなっており,その法制審議会を平成31年から始める,となっています。

*3:妄想です。ただし,内閣官房の裁判手続のIT化検討会取りまとめでも,「専用システム構築までの過渡的措置として、準備書面等について、当事者間で電子メール等のITツールを用いた直送の実施等を、到達確認の確保策など必要な対応を講じて、速やかに導入することも考えられる。」としているので,あり得ない話ではありません。