e法廷(e-Court) ~書面による準備手続による試行~ #3

 いよいよ,e-Courtによる期日が始まる。

 5分前に,ノートパソコンを持って会議室に入り,パソコンをネットに接続した。なぜ会議室に入るかというと,デスクで期日に参加すると,他の弁護士や事務職員に内容を聞かれたりして(貧乏なので個室はない),守秘義務上,問題があると思われるからである。電話が掛かってきたりして,うるさいということもある。

 パソコンでウェブブラウザを開いて,予め教えられたURL(https://appear.in/touti-h31-wa-99999)を入力する。すると,すぐにappear.inの画面が表示された。準備のときに1回ログインしているので,改めてログインしなくても,自分のログインIDでappear.inにアクセスできているようだ。Knockというボタンをクリックしてしばらくすると,画面に裁判官と相手方の顔が映った。*1 拍子抜けするくらい簡単である。

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 裁判官が「裁判所ですが,先生方のお顔が映っています。音声は聞こえますか?」と言ってきたので,「こちらも裁判官と◯◯先生の顔が映ってます。裁判官の声は聞こえます。」と回答。相手方の先生も同様の回答。私から「◯◯先生の声も聞こえます。」と回答した。スムーズに開始できたようである。裁判官が「では,書面による準備手続の協議を始めます。」と宣言して,期日が始まった。*2

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(※画面はイメージです。)

 書面による準備手続では,準備書面の陳述や証拠の提出ができないので,よくある弁論準備のように,「原告の準備書面,陳述で良いですか?」「甲◯から◯まで提出ということで。」「じゃあ次回は被告の反論ということで,期日は通常どおりでいいですか?」なんていうやり取りだけで終わらせることができない。いきおい本来,争点整理手続で予定されている「争点の整理」が真面目に行われることになる。なんか新鮮でいい感じ。

 事前に提出された被告の準備書面(1)と原告の第1準備書面で明らかとなった争いのない事実と争点が裁判官によって整理され,被告代理人からは反論の予定が語られた。裁判官からは現時点での和解の意向についても一応お尋ねがあったが,今の時点ではまだ和解の話は難しいので,もう少し審理を進めてからということになった。

 最後に,裁判官が提出予定の書面や証拠について整理を行い,次回の期日(協議)の日程を調整した。事務所で出席できるので,裁判所までの往復の時間を考えなくてよい。そのせいか比較的,近いところで期日を入れることができた。

 期日が終わったときに行う操作は,ウェブブラウザを閉じるだけ。簡単である。時間としては,締めて20分というところか。書面の陳述や証拠の提出ができない割には,意外に時間が掛かった。形式的な手続だけでなく,実質的な議論や整理をやったので,意外に時間が掛かったのだ。e-Courtだと,当事者と裁判所の間に1枚膜があるような感じで,形骸化している口頭主義がより形骸化するのでは?なんて心配もあったが,これ意外に口頭でのやり取りを活性化するのではないか?

 また,以前は電話による弁論準備で,電話だけで参加していると,裁判所に出頭している相手方の方が直接,裁判官にアピールできるので,なんとなく有利・不利がある感じがしていたが,これだと双方,回線越しだから,どっちが不利という不安感もない。

(つづく)

*1:裁判所の方では,appear.inの機能で,私からこのe-Courtに入れてください=ノックの画面が表示され,Let inという操作をしています。

*2:正直,書面による準備手続の協議を経験したことがないので,想像の部分が多いです。